★骨髄バンクについて
Q1 骨髄バンクはどんな制度ですか?
骨髄バンク事業は、厚生労働省の主導で、(財)骨髄移植推進財団が主体となり、日本赤十字社と都道府県、政令市、特別区の協力により行われている公的事業です。かっては不治の病であった白血病など血液難病の患者さんに、健康な骨髄液を移植することによって、多くの命を救うことができるようになりました。多くの善意の人を募り、白血球の型が適合した骨髄液の提供者の方と骨髄移植を希望する患者さんとの橋渡しをすることが骨髄バンクの役割です。
Q2 骨髄液の移植で、なぜ白血病などの患者さんの命を救えるのでしょうか?
骨髄液には、赤血球、白血球、血小板といった血液成分のもとになる骨髄幹細胞が含まれています。健康な骨髄幹細胞を患者さんの病気におかされた骨髄幹細胞と換えることにより、正常な血液を造る機能を回復することができるからです。
Q3 なぜ骨髄移植をするのか?
骨髄移植が必要となる病気では、当然ながら骨髄の働きがおかしくなっています。骨髄が悪くなり、正常な血液を作り出せないのです。つまり、ある未熟な血球が過剰に作り出されたり(白血病)、血球数が低くなったり(再生不良性貧血)するわけです。こうした不良な骨髄を、正常な骨髄と入れ返る部品交換のように考えてください。その交換作業が<骨髄移植>であると考えれば分かりやすいでしょう。骨髄移植>
Q4 骨髄移植をして治る病気はどのようなものがあるのでしょうか?
血液のがんと言われる「白血病」と、血液を作り出すことでできなくなる「再生不良性貧血」が、骨髄移植で治る代表的な病気です。他には先天性の免疫不全症候群、代謝異常症(小児の病気)があります。また、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの病気の治療法として骨髄移植が選択されることもあります。
Q5 骨髄移植をしたらなぜ病気が治るのでしょう?
急性白血病の場合、まず抗がん剤による治療を行います。そこで70〜80%の患者さんは、"寛解"と呼ばれる一見正常の状態となります。しかし、白血病細胞がすべて殺されたわけでないため、半数以上の方が再発をしてしまします。骨髄移植は、全身に放射線と大量の抗がん剤を使って、残っている白血病細胞を消滅させて、破壊された患者さんの骨髄を、健康なドナー骨髄で置き換える治療法です。新たに造られた血液細胞(リンパ球)が、患者さんの体内にわずかに残った白血病細胞をみつけて攻撃すると考えられています。そのため移植後の白血病の再発が少なくなると言われています。
Q6 骨髄移植をすればすべての患者さんが助かるのでしょうか?
残念ながらすべての患者さんが助かるわけではありません。骨髄移植は実はリスクの高い治療です。「GVHD(移植片対宿主病)」といわれる骨髄移植特有の免疫反応により、肝臓、胃腸、皮膚などの障害を受けたり、細菌などに弱くなり肺炎にかかったり、あるいは移植前の抗がん剤などの副作用により肝臓や腎臓の障害を受けて、移植を受けたにもかかわらず10〜20%の患者さんが死亡されます。また、移植後に白血病などのもとの病気が再発してしまうこともあります。全体として長期的に生存できるかたは、全移植患者さんのうち50〜60%となっています。もちろん移植をしなければほとんどの方は助かる見込みはない患者さんであります 。つまり、骨髄移植は助かる見込みのない病気に対して残された唯一の治療法と言えます。
Q7 患者さんは骨髄移植で助かるのでしょうか?
白血病など血液難病は、まず抗がん剤などによる治療(化学療法)が行われます。しかし、薬の治療では治癒が難しい場合、移植が選択されます。病気の種類や患者さんの年齢、移植の時期によって成績は異なり、100%助かるわけではありません。しかし、移植を待っている患者さんにとっては、骨髄バンクやドナーの存在が生きる希望となっています。
Q8 骨を削ったり切り取ったりするのですか?
骨髄移植というと骨を削ったり切り取ったりして移植するイメージがあるかも知れませんが、そうではありません。腰の骨(腸骨)から注射器で骨髄液を抜き取るのが骨髄採取です。原則として全身麻酔下で行われますので採取時の痛みはありません。
Q9 骨髄移植はどのように行われるのでしょうか?
骨髄移植というと、太い神経が走っている脊髄を移植すると勘違いしている方がいますが、実際は骨の中にある骨髄液を移植するものです。健康な骨髄液を提供してくれる方を骨髄ドナーといいます。骨髄液は、採取しやすい腸骨と呼ばれる骨盤を形成する大きな腰骨から注射器で採取します。骨髄ドナーの方の体重によって個人差はありますが、数百ミリリットル〜1リットルほどの骨髄液を採取します。そして、採取した骨髄液を患者さんに直接点滴して、患者さんの病気におかされた骨髄幹細胞を健康なものに置き換えます。ただし、骨髄ドナーは20歳から55歳の健康な成人に限られています。
Q10 骨髄移植はどのように行うのですか?
患者さんの病気に侵された骨髄を、"前処置"と呼ばれる大量の抗がん剤と全身への放射線をかけることにより空の状態にして、ドナーの骨髄を輸血と同じ方法で静脈内に点滴で輸注します。輸注する骨髄液は、患者体重kg当たり15mlとなります。50kgの方には750mlの骨髄液が輸血されます。血液型(ABO型)には関係なく骨髄移植が可能です。入れた骨髄の細胞は自分の行くべき場所である骨髄をちゃんと見つけて定着します。
Q11 骨髄の移植の方法は?
まず、提供者から骨髄液を抜き出します。それを患者に輸血のような方法で注ぎ込みます。
骨髄は、腸骨(ちょうこつ)という骨盤の一部から注射器で採取されます。提供者は全身麻酔を受け、手術室でうつ伏せになります。この状態から骨盤の背中側、ベルトの位置より少し下の腸骨に、専用の針を左右数カ所刺して吸引します。採取する量は患者の体重に応じて変わりますが、通常500〜1,000mlの範囲です。所要時間は1〜3時間。抜き取った骨髄は、1ヵ月程度で回復します。
このようにして抜き取られた骨髄は機械によって移植用の処理を受け、患者の身体に点滴注射のような要領で注入されます。
骨髄は血液に似た液状の成分で、経静脈的に輸注されます。循環 血液中に入れば、生理的な機構が働きます。患者の不良(病的)な骨髄に代わり、骨髄腔内に自然に移植骨髄が生着します。骨髄移植に関しては、ドナーと違い患者は一切の痛みを感じません。
Q12 骨髄移植は手術なの?
近年の骨髄移植では、メスが用いられることはまずありません。皮膚や肉を切り裂いて行われるような、「手術」「オペ」と聞いて一般人が漠然とイメージするそれとはかなりの隔たりがあると考えていいでしょう。実際、提供者が全身麻酔をかけられて眠ること、採取が手術室で行われることの2点を除けば、骨髄移植はどちらかというと輸血に近い作業なのかもしれません。
とくに患者側からすれば、届けられた骨髄液のパックをまさしく輸血の要領で注入するのみ。この点に着目すれば、医学的な定義からしても手術とは言いにくいと思われます。
ただ、提供者の体内から骨髄液を採取する作業は、医学的な見地から手術と定義されます。
骨髄バンクは、メスを使って体を切り 刻むような誤ったイメージが定着するのを恐れ、なるべく「手術」という表現を用いるのを避けたがる傾向にあります。しかし、骨髄液の採取に関してのみ厳密にいえば、これは立派な手術になってしまうのです。
Q13 骨髄の移植は簡単にできるのでしょうか?
簡単な治療とはいえません。患者さんは、骨髄移植の前に1〜2週間かけて、全身への放射線照射などで、自分の骨髄幹細胞を完全に破壊したうえで移植を行い、移植した骨髄が働き始め正常な血液成分を造るまでの間は無菌病室で療養する必要があります。
Q14 骨髄移植が必要な病気(患者)とは?
1.白血病
2.重度の再生不良性貧血
3.リンパ腫(ホジキン病など)
4.多発性骨髄腫
5.免疫不全症
―以上のような病気の患者が骨髄移植を必要とします。ただし他の治療で治る場合もあり、これらの病気だから必ず移植が必要になるわけではありません。
Q15 骨髄移植を希望している患者さんは年間何人?
約1,500人です。
骨髄移植が有効な治療法になる病気は、白血病、再生不良性貧血、先天性免疫不全症、一部の先天性代謝異常疾患などです。白血病を例にあげると、日本では年間6,000人以上も発症しています。白血病というと「不治の病」というイメージも強いですが、実際には化学療法という抗がん剤による治療のみで治る患者さんも多くなりました。
骨髄移植は化学療法では治る見込みのないような患者さんたちに行われる治療法です。移植の前の処置として、致死量を超える抗がん剤や放射線照射を用いるため、高齢の患者さんには適していません。ですから、原則として50歳以下の患者さんが対象となり、年間約2,000人が、骨髄移 植などの造血幹細胞移植を必要としています。このうち約4分の1の方には兄弟姉妹などの血縁者に適合ドナーが見つかります。残り約1,500人が骨髄バンクによる非血縁者間骨髄移植を希望しているのが現状です。
Q16 他のバンクとは何が違うのですか?
骨髄バンクに関することについてですが、骨髄液は冷凍保存するものではないので登録する時に骨髄は採取しません。(登録時には血液検査で白血球の型(HLA)を調べHLAが一致した患者さんが移植を希望した際に採取することになります)また、他のアイバンクや腎バンクなどと違って死後に提供するものではありません。
Q17 臍帯血(バンク)とは何ですか?
親と胎児を結ぶ臍帯と、胎盤の中に含まれる血液を臍帯血といいます。臍帯血は通常の出産の場合、出産後は不要となりますが、血液細胞を作り出すもとである「造血幹細胞」がたくさん含まれているので、これを患者さんに移植することによって、骨髄移植と同様の効果を得ることが出来ます。移植成績については調査中です。
さい帯血バンクのホームページ
Q18 最近臍帯(さいたい)血バンクを介した移植もあると聞きますが、骨髄バンクとはどう違うのですか?
赤ちゃん出産時の"へその緒"のついた胎盤に含まれる血液には、たくさんの造血幹細胞(血液のもとになる細胞)があります。この血液を一旦冷凍保存して、骨髄移植と同じように患者さんに戻して、白血病など血液の病気の治療に役立てるのが臍帯血移植です。
ドナーの負担がなく、コーディネートに要する時間が短いため、骨髄バンクでドナーが見つからず、移植を急ぐ患者さんに対して、最近、移植例が増えています。しかし、長期的な移植成績に関して、まだ不明な点があります。また、さい帯血バンクは公的なバンクではなく、日本さい帯血バンクネットワークとして、全国11のさい帯血バンクをつな いで移植可能なさい帯血の検索を可能としています。現時点でのさい帯血バンクの位置づけは、骨髄バンクでドナーがみつけられない患者さんが、第3の移植ドナーを検索するものということになっています。
Q19 さい帯血バンクが出来て骨髄ドナーは要らなくなるの?
これからも骨髄バンクは必要です。
骨髄移植、さい帯血移植はそれぞれ長所短所があり、患者さんに合わせて行っています。残念ながらまだどちらも絶対数が足らず、多くの患者さんが移植を希望されて要るにも関わらず、移植できないでいる患者さんがたくさんいます。今後もドナー登録にご協力をお願いします。
Q20 なぜ、骨髄移植から さい帯血移植へと全面的に切り替えないのですか?
臍(さい)帯血とは、日本さい帯血バンクネットワークから引用しますと、出産の時、赤ちゃんのへその緒とお母さんの胎盤にある血液で、骨髄移植と同じように患者さんに移植して病気を治すことができます。さい帯血の提供は出産時に行われ、赤ちゃんにもお母さんにもまったく痛みがなく、短時間で終わるのが特徴です。
他にも動員末梢血移植などありますが、移植はどれも一長一短です。さい帯血では、採取できる量が骨髄移植と比べると少ないため、全ての骨髄移植をさい帯血移植で代用することは出来ません。
一番大切なことは、数ある移植方法の中から、患者さん個人個人にとって最良のものを選ぶことができる環境です。そして骨髄移植は、現在も有効な� ��療法の一つですから、希望する患者さんが確実に移植できるように環境を整える必要があります。
Q21 死後に提供するのですか?
骨髄移植は生体間移植です。骨髄液の提供は、健康な人が患者さんのために自分の命の一部を分けてあげるもので、採取された分量の骨髄液は3週間ぐらいで元通りに回復します。この意味で、骨髄提供は死後に臓器を提供するアイバンクや腎バンクとは大きく異なり、献血の一種と考えて差し支えありません。
Q22 骨髄液を冷凍保存しておくバンクですか?
骨髄バンクは、自分とHLAの型の一致した患者が見つかったときに骨髄液のドナーになってもよいという意志と情報を登録しておくバンクで、骨髄液そのものをあらかじめ採取して保存しておくバンクではありません。従って、登録時に必要とされるのは献血の場合と同様の血液検査だけです。
Q23 骨髄は血液のように冷凍保存できないのでしょうか?
不可能ではありませんが、冷凍すると骨髄の細胞の生存率が低下するため、採取した直後に移植するのが効果的と考えられています。したがって骨髄バンクでは、採取した骨髄液を24時間以内に患者さんに移植することとしています。
Q24 過去に死亡事例はありますか?
日本骨髄バンク(非血縁者間)では、死亡事例は発生しておりませんが、過去に家族のための骨髄採取(血縁者間)にともないイタリアで2件、日本では、麻酔事故によるドナーの死亡事例が、1件報告されています。
健康なドナーであっても通常の手術と同様に、麻酔中に緊急の処置を行う必要がある可能性はわずかにあります。骨髄バンクの採取病院ではドナーの安全確保のために、厳重な管理下で骨髄採取が行なわれています。
Q25 死亡事例について教えてください。
これまで世界で6万件以上の骨髄採取が行われていますが、重大な事故はきわめてまれです。日本の骨髄バンクを介しての骨髄採取では、死亡事例は発生していません。しかし、過去に海外で3件(血縁者間2例、非血縁者間1例)、日本で1件(血縁者間)のドナーの死亡事例が報告されています。健康なドナーの方であっても通常の手術と同様に、麻酔中に緊急の処置を行う必要が起こる可能性がわずかにあります。そのため採取病院では、ドナーの安全を確保するため最大限の注意をはらい万全の態勢で骨髄採取が行われています。
過去の死亡事例について:
骨髄移植推進財団のQ&Aから引用しますと、「日本の骨髄バンクを介しての骨髄採取では、死亡事例は発 生していません。しかし、過去に海外で3件(血縁者間2例、非血縁者間1例)、日本で1件(血縁者間)のドナーの死亡事例が報告されています。健康なドナーであっても通常の手術と同様に、麻酔中に緊急の処置を行う必要が起こる可能性がわずかにあります。そのため採取病院では、ドナーの安全を確保するため最大限の注意をはらい、万全の態勢で骨髄採取が行われています。」
これから何年も無事故が続いたとしても、過去の事例が消えることはありません。
しかし、引用した財団のQ&Aにも書いているように、財団の方としても最大限の安全策を講じている、ということは言えると思います。
★骨髄について
Q26 骨髄とは何?
骨の中にある血液の細胞を作る組織です。
私たちの命を維持する上で欠かせないのが血液です。血液のおもな細胞には赤血球、白血球、血小板などがありますが、これらの細胞は骨の中にある「骨髄」という場所で造られています。骨はちょうど竹のような構造をしていて、硬い皮質という部分に囲まれている中空部分を「骨髄」と呼んでいます。骨髄はゼリー状になっていて、その中に赤血球や白血球などを作る造血幹細胞という細胞が含まれているのです。
骨髄移植の対象となる白血病や再生不良性貧血、先天性免疫不全症などの病気は、この「骨髄」が正常に働かなくなってしまう病気です。抗癌剤などの薬による治療でも病状が良くならない場合、健康な人の「骨髄」を移植することによってその病気を治す可能性がでてきます。
骨髄採取は、おもに腸骨という� �盤の一部から行われます。丁度ズボンのベルトがあたる部分の骨です。皮膚の上から専用の針をさして、注射器で骨髄を吸い取っていきます。この骨髄造血幹細胞を患者さんに移植すると、ドナーの方の血液細胞が増殖をして生命の維持に必要な赤血球、白血球、血小板などが造られるのです。
Q27 骨髄とは?
骨の髄(ずい)です。人間の身体の中にある骨というのは、詳しく見るとチクワやストローのように中心部が空洞になっています。この空洞部にあるゼリー状の物質が<骨髄>です。主に血を造るという重要な働きがあります。読みは、「こつずい」です。よく脊髄(せきずい)と混同してしまう方がいますが、全くの別物です。また、血液と同じように少なくなると自動的に生成されます。このため、骨髄移植で骨髄を他人に提供しても、しばらくすれば自然と元の状態に戻ります。骨髄>
Q28 骨髄って脊髄のことですか?
骨髄は骨の内部にあるゼリー状の組織で、血液に似た赤い液体(骨髄液)で満たされています。この液体中には血液の成分のもとになる骨髄幹細胞が含まれているのです。従って、脊髄とは全く別のもので、骨髄移植では脊髄に針を刺したりメスを入れたりはしません。
Q29 骨髄(こつずい)と脊髄(せきずい)はどう違うのですか?
骨髄は骨の中心部にある造血組織で、血液(白血球、赤血球、血小板)はここで造られ、血管を通じて全身を巡ります。骨髄にある骨髄液(正確には造血幹細胞)を健康なドナーのものと入れ替えるのが骨髄移植です。脊髄は、脳から延びて背骨(脊椎管)の中を通っている中枢神経のことをいいます。骨髄移植とはまったく関係ありません。
Q30 骨髄採取が脊髄を傷つける恐れは?
ありません。あり得ないといえるでしょう。
骨髄と脊髄は全く別物で、骨髄(液)を注射器で抜き出すときにも脊髄には一切触れません。そもそも場所が違います。骨髄採取を腰椎穿刺と混同してしまったときに起こる誤った認識ではないでしょうか。
Q31 骨髄採取は脊髄を傷つけるのでは?
採取で脊髄が傷つくことはありえません。
「骨髄液」は腰のあたりから注射で採取するので、よく腰椎穿刺という検査と混同なさっている方がいますが、腰椎穿刺は、髄膜炎などの病気の診断で行われる検査。骨髄採取とは全く違うものです。骨盤と脊椎をつなげる腰椎では背骨の後ろ側を骨に囲まれるようにして「脊髄」が走っているので、この検査(腰椎穿刺)では「脊髄」を傷つけてしまう可能性はあります。それでも下半身不随のような深刻な障害は、きわめて稀なケースでしょう。
「骨髄」は腰や胸の骨の内部にある血液をつくる組織、「脊髄」は背骨の後ろ側を走る神経組織で、2つは別物です。骨髄移植に必要な「骨髄液」は、背骨ではなく骨盤の骨から 採取するので、「脊髄」を傷つける可能性は絶対にないんですよ。まして採取がもとで下半身不随になるなんてことはありません。
Q32 骨髄採取で身長が低くなるの?背骨を取ったの?
背骨を取ったり、背骨からは採取しません。
骨髄を脊髄と勘違いされる方もおられました。実際には、腰の腸骨から注射器で骨髄液を採取するものです。従って脊髄に傷を付ける事はありません。
Q33 骨髄液はどの部分から採取するの?
腸骨からです。
成人の骨の中で最も安全に、最も多くの骨髄を採取できるのは「腸骨」という骨盤の一部を構成する骨です。腰のベルトがあたる骨ですからすぐお分かりになるかと思います。
採取では、ドナーの方にうつ伏せの状態で寝ていただき、背中側から注射器を使って採取します。採取に用いる針は骨髄採取専用のもので、ドナーの体格に合わせたサイズを選択します。皮膚を通して腸骨に垂直に針を刺し、1カ所から数〜10ml程度ずつ注射器で吸い取っていきます。皮膚は前後左右に少し動くので、同じ皮膚の穴を使って数カ所の骨に刺すことができます。このような穿刺を繰り返し、合計500〜1,000ml程度の骨髄を採取します。ですから皮膚に� �通常、左右それぞれ数個程度の痕しか残りませんが、骨には数ヶ所の小さな針孔があくことになります。またその注射痕も、3〜6ヶ月後には消えてしまいます。また骨にあいた小さな穴も骨は再生力が高いので数ヶ月で塞がります。
Q34 骨髄はどこから採取するのですか?
骨髄は、骨盤を形成する大きな腰の骨(腸骨といいます)から注射器で採取されます。手術室でうつ伏せになった状態で、骨盤の背中側、ウエストの位置より少し下の腸骨に、専用の針を左右数十カ所刺して吸引します。皮膚の採取跡は通常、左右数カ所です。採取する量は通常500〜1,000ml(患者さんの体重に応じて採取量が決まります)で、所要時間は1〜3時間です。
Q35 人間の体には、どれくらいの骨髄液があるのですか?
体内にある骨髄液は、血液の中に幹細胞として混ざっている状態で存在します。ドナーから骨髄液として採取しているものは、「骨髄を循環している血液」を含んでおり、その量は血液の量の20%強を占めています。
Q36 どのくらいの骨髄液を採るのですか?
患者さんの体重によって異なり、小児なら200〜300mlですむこともあれば、大人の患者さんの場合は 1,000mlを越えることもあります。骨髄採取量は、ドナーの体重ごとに基準が設けられており、全身の骨髄幹細胞の5%以下となっています。なお、骨髄幹細胞は自己複製能力をもっており、通常、骨髄は採取後1カ月ほどで元の常態に戻ります。その間でも日常生活に支障がありません。
Q37 どのくらい骨髄を採りますか?また、骨髄は元にもどりますか?
ドナーの健康上、何パーセントの骨髄が採取されるかということよりも、どのくらいの血液量が失われるか(出血量)が重要になります。採取する骨髄の量(出血量)は、適合した患者さんの体重によって異なります。小児の場合200mlで済むこともありますし、大人では1,000mlを超えることもありますが、ドナーの体重に応じて、安全な範囲が定められています。健常成人では、骨髄で赤血球が2,000億個、白血球と血小板は日々1,000億個生産されており、出血(骨髄採取≒出血)した場合などはその生産量が調整されて増加します。骨髄は採取後1カ月ほどで元の状態に戻りますし、その間、日常生活に支障はありません。
Q38 HLA型ってなに?
白血球の型のことです。
ヒトの赤血球にはA型、B型などの血液型がありますが、白血球にも型があり、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれています。
HLAはA、B、C、DR、DQ、DPなど多くの抗原の組み合わせで構成され、なかでも骨髄移植で重要と考えられているのはA、B、DRの3つです。さらにA、B、DRとも10〜数十種類の違ったタイプがあり、個人はそれぞれ2個ずつ、合計6個の抗原を持っているのです。つまりA〈A24とA11〉、B〈B52とB62〉、DR〈DR2とDR4〉……などという具合で、それぞれの組み合わせは両親からの遺伝で決まってくるものです。この組み合わせの種類をすべて割り出そうとすると、天文学的な数字になってしま� ��ます。
兄弟姉妹の間では4分の1の確率でHLAが一致しますが、少子化で兄弟姉妹が少なくなっている現在は、血縁者からドナーを探すことも難しくなっています。非血縁者間でHLAが一致する確率は数百人〜数万人に1人と低くなってしまうため、数十万人のドナーの登録が必要になるわけです。
Q39 HLAとは?